水ストレス地域における水資源使用の取リ組み

日本光電では、事業を展開する各地域における水ストレス地域の特定とリスク評価を行っています。WRI(世界資源研究所)が開発した水リスクマップAqueductで確認したところ、全13拠点が、他の地域と比較し相対的に水ストレスの高い地域であることが分かりました。現時点では、水ストレス地域において水に関する問題は顕在化していないものの、引き続き、各地域の規制に適切に対応するとともに、水の適正使用や効率使用、安全供給に取り組んでいきます。
なお、生産を行っていない一部の海外販売子会社では実績値を取得できていないことから、現在データ収集を進めています。

米州

米国、メキシコ (4拠点)

欧州

スペイン (1拠点)

アジア州 他

インド、アラブ首長国連邦、中国、ケニア (8拠点)

優先地域

日本光電は、当社事業のうち、試薬製造が自然資本を集約的に利用する工程であると特定しています。試薬製造では、多量の良質な淡水をろ過した純水を製造に利用しているほか、薬液洗浄においても純水を利用しています。排水の際には、自社の手順書に従って、廃液タンクの薬液濃度を規制基準の範囲内に抑えることで、水質汚染を防止しています。試薬製造における水資源の量および質への依存度と各地域の水資源に対する影響を考慮した上で、水資源に関する実質的な依存・影響・リスク・機会がある優先地域を試薬工場周辺であると特定し、リスト化を進めています。
さらに、特定した優先地域において、WRI(世界資源研究所)が開発した水リスクマップAqueductをもとに、水資源に関するリスクを毎年評価するとともに、取水量の予測を立て、計画的な取水と排水量の削減を行っています。

●富岡事業所 富岡工場

群馬県富岡市七日市486

●日本光電フィレンツェ有限会社

Via Torta, 72/74, 50019 Sesto Fiorentino Firenze, Italy

●上海光電医用電子儀器有限公司

中国上海市奉賢区環城北路567号(上海市工業総合開発区内)

●日本光電インディア株式会社

Plot No. 5531, Road No. 55, G.I.D.C., Sachin, Surat-394 230, Gujarat, India

●日本光電ミドルイースト株式会社

QC4-QC5-QC6-QC7 DAFZA INDUSTRIAL PARK, AI Qusais, Dubai, U.A.E

水管理計画

日本光電では、血球計数器の試薬を生産していることから、マザー工場である日本光電富岡(株)における取水量が全体の38%を占めています。日本光電富岡(株)では、富岡サイト全体での水使用量の予測値を立て、年間の環境目標として設定するとともに、取水量と排水量を把握し適切に維持管理することで、水資源の有効活用に努めています。

水資源負荷の少ない製品の提供

日本光電では1972年の製品化以来、コンパクトで使いやすさを追求した血球計数器を開発、販売してきました。最新機種のMEK-1300シリーズは、従来機種と比較し、血液検査に対する安全性、迅速性、利便性、正確性、製品のメンテナンス体制の向上に加え、検査時における血液の希釈や、機器内の洗浄に使用する試薬の使用量を年間約20%削減~{※}し、排液排出量の削減を実現しています。

 

全自動血球計数・免疫反応測定装置 MEK-1303
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全自動血球計数・免疫反応測定装置 MEK-1303

※ 当社最新機種(全自動血球計数器MEK-1300シリーズおよび全自動血球計数・免疫反応測定装置MEK-1303)と、従来機種(全自動血球計数器MEK-6500シリーズ)にて1日10件の検査を実施した場合の比較結果。

法規制への対応

日本光電では、水に関する重大な違反や罰金・制裁金の支払い、重大な漏出はありません。また、国内・海外のすべての拠点において、水質・水量の許認可・規制等に関して、不適合や法令違反は発生していません。

水資源保護活動チームの取り組み

日本光電は、「循環型経済の推進」をサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の1つに掲げ、「水使用量・水循環利用量」をKPIとして、取り組みを強化しています。
この課題解決に向け、日本光電富岡(株)は、国内外の試薬製造プラントと富岡生産センタにおいて、それぞれ水資源対策に取り組みました。

国内外の試薬工場での対策

日本光電は、富岡に加え、上海(中国)、フィレンツェ(イタリア)、スーラト(インド)、ドバイ(アラブ首長国連邦)でも試薬を製造しています。試薬の品質レベルを維持するために、精製水製造段階とパイプラインの試薬洗浄段階において大量の水を必要とします。国内外の各プラント設備の仕様と設備規模によって水使用量と排水量も異なります。そのため数回にわたってプラントごとに水道水の取水段階から精製、RO濃縮、出荷、プラント内のライン洗浄、排水までの各段階の水使用量と、取水量に占める試薬出荷量と排水量の比率を調査しました。
続いて、各プラント設備の洗浄に使用される精製水の適切な使用量を特定するため、各プラントにおける洗浄手順を明確にしました。使用量と洗浄手順をそれぞれ比較検証することで、各プラントの削減目標値(KPI)の検討を進めています。

※ RO濃縮(Reverse Osmosis):RO膜を使用して水から不純物を除去し、残留物の濃度を高めること。

ドバイ試薬工場でのRO膜交換

ドバイと富岡の生産担当者が複数回のディスカッションを重ねて検証を進めることで、ドバイ試薬工場では、精製水製造のための水使用量の比率が20%増加していることが判明したことから、RO膜を交換しました。使用量の調査を継続したことで、結果としてRO膜の適切な交換時期の設定が可能となりました。

※ RO(Reverse Osmosis)膜:逆浸透膜。0.001~0.002ミクロンの超微細孔のフィルター。RO膜処理した水がRO水。

インド試薬工場での洗浄手順の見直し

インド試薬工場での生産量の増加に伴い、インドと富岡の生産担当者、開発担当者が協力して洗浄手順を見直しました。この見直しにより、試薬の品質レベルを維持しつつ、取水量に対する排水量比率を4.6%下げることで水使用量を削減し、水資源の有効利用に貢献しました。この取り組みは、品質レベルを維持した生産効率と、環境保護の両方を実現するための重要な一歩となりました。

パートナー企業との連携

富岡試薬工場では、プラントの取水量、排水量の視覚化をさらに一歩前進させ、パートナー企業と連携した水資源対策を進めています。RO水を効率よく精製するための対策を進めたことで、精製水製造のための水使用量を約10%削減することができました。
各国でプラント設備は異なりますが、各プラントの水使用量の比較検証を継続する中で、富岡試薬工場での水使用量削減の成功事例を海外の各試薬工場に展開することを今後も検討していきます。

富岡 試薬工場の対策メンバ
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富岡 試薬工場の対策メンバ

富岡生産センタの対策

富岡生産センタ全体で水の使用量と排出量を削減するため、チームで取り組みを継続してきました。
まず、取水量と排水量を継続調査することで、老朽化した給水管の切り替えを行い、漏水対策を行いました。
また、社員数の多い富岡生産センタでは、2022年度から一部のトイレで雨水を洗浄水として利用することを検討してきました。トイレで使用する上水量を計測し、雨水タンクを新たに設置した場合のコストを計算しました。既存の設備に追加して、新たに雨水タンクと送水パイプ等を設置した費用と年間維持費が予算計画を大幅に上回る結果となったため、この雨水タンク設置の投資案を見送りましたが、これらの検討内容は社内で情報共有し、水使用削減のためにできることを考える良いきっかけとなりました。2024年7月から新たに着工した新鶴ヶ島工場では、トイレの雨水利用を設計計画に含めています。
さらに水使用量を削減するため、節水効果のあるトイレットペーパーを特定するために、9種類のトイレットペーパーを2ヵ月に渡って比較検証しました。その結果、配管詰まりが起きず、水削減効果が得られるトイレットペーパーに切り替えたことで、現在では、約30m3/月の節水効果を実現しました。
引き続き、事業活動を通じた環境課題の解決に向け、取り組みを一層推進していきます。

富岡生産センタの対策メンバ
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富岡生産センタの対策メンバ