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- 代表取締役
社長執行役員Chief Executive Officer
荻野 博一
日本光電は1951年の創立以来、経営理念「病魔の克服と健康増進に先端技術で挑戦することにより世界に貢献すると共に社員の豊かな生活を創造する」の実現を目指し、革新的で高品質な医療機器を数多く世界に送り出してきました。創立時のメンバーはわずか12名でしたが、現在では従業員が5,800名を超え、世界中でヘルスケアの課題への挑戦を続けています。日本光電がこれまで開発した製品は、世界120カ国以上に輸出され、世界各国の医療現場で使用され、多くの患者さんを救ってきました。
日本光電は、一人でも多くの患者さんを救うために、技術革新とより高品質な製品を生み出すことに挑戦し続けています。医療機器メーカとして、臨床的な価値や、患者さんにとっての価値を提供することが日本光電の使命です。「医療現場に根差した技術開発力」「国内外の幅広い顧客基盤」「高品質の製品・サービスとそれを支える開発・生産・販売・サービス体制」「長年にわたって培われたブランド力」など、日本光電には社会に対する価値創造を可能にする強みがあります。
2021年度から2023年度までの中期経営計画「BEACON 2030 Phase I」では、「基盤の強化」をテーマに、経営・事業・組織の視点から重要施策を推進し、粗利率50%以上、営業利益率10%以上を定常的に確保できる企業体質への変革に取り組みました。
サステナビリティの推進では、初めてサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)・KPIを特定し課題解決に取り組む中、社外有識者で構成されるアドバイザリーボードを設置し、社外の視点を取り入れました。また、サステナビリティを事業活動の中核とする企業文化を育むことを目的に、全社員を対象としたサステナビリティ・ディスカッション(計31回、参加者4,000名以上)を開催しました。社会面では、人権方針に基づく人権デューデリジェンスで重要人権課題を特定し、リスク低減に向けた取り組みを推進しました。また、マルチステークホルダー方針を策定・公開しました。環境面では、TCFDに基づく情報開示、水資源保護への対応推進、環境配慮型製品の取り組みを強化した「Green Product Label」認定制度を開始しました。
経営の視点では、最優先課題としてコンプライアンスの徹底に注力しました。2021年に発生した不祥事と同様の事案を二度と起こさないという固い誓いのもと、すべての再発防止策を導入・実施し、モニタリングを継続しています。
事業の視点では、当社初のオートショックAEDや全静脈麻酔支援シリンジポンプ制御ソフトウェア、人工呼吸器の中位機種モデルなど顧客価値の高い新製品を相次いで投入しました。米国のアンプスリーディ社、イタリアのソフトウェアチーム社を買収し、DHS(デジタルヘルスソリューション)の取り組みも加速させました。
組織の視点では、PLM/MES※1システムの導入に着手し、グローバルサプライチェーンマネジメント体制の構築を推進しました。また、上級職、一般社員を対象とした役割型の新人事制度も導入しました。
資本コストを意識した経営の実践に向けては、ROEの目標10%を確保するため、投資判断基準にNPV・IRR※2を採用し、新規投資案件の評価を開始しました。
経営目標値については、北米や中国の実質売上が計画未達となったことに加え、在庫評価減の増加に伴う粗利率の低下、人員増や賃上げ、インフレによる販管費の増加により、最終年度の営業利益・営業利益率は残念ながら目標に届かず、収益性の改善が課題として残りました。また、半導体の需給ひっ迫に対応するため在庫が増えたことがCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の長期化につながりました。新中期経営計画では、全社収益改革を着実に実行するとともに、資本効率の改善に取り組みます。
※1 PLM(Product Life-cycle Management):製品ライフサイクル管理、MES(Manufacturing Execution System):製造実行システム。
※2 NPV(Net Present Value):正味現在価値、IRR(Internal Rate of Return):内部収益率。