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今、動きはじめている夢

ビジョンを実現するために、
18カ国の社員と
一つのカルチャーをつくる。
ビジョンを
実現するために、
18カ国の社員と
一つのカルチャーを
つくる。
欧米、アジア、アフリカなど、世界各地に拠点を持つ日本光電。現地法人や社員の増加、海外売上高といった目に見えるグローバル化が進行してきた傍らで、「価値観の共有」に着目し、グローバルな理念の浸透に情熱を傾け続けた人々がいる。2020年、日本光電として初めて海外向けを意識した「グローバル共通価値基準」が誕生した。言葉や文化の違いを超え、同じ価値観のもとに集う「真のグローバル企業」になれるか。その挑戦の軌道を、人財開発本部の百瀬と米村に聞く。

世界の仲間が、
理念を知らずに働いている。

世界の仲間が、
理念を知らずに
働いている。

2014年、入社9年目の百瀬は海外研修先として訪れた国々で衝撃を受けた。アメリカ、コロンビア、ブラジル、ドイツ。「海外子会社のメンバは、思っていた以上に日本光電の歴史や理念を知らない」。 それまで国内の新卒採用に従事し、学生たちに対しても理念を重視した採用選考を行ってきた百瀬にとって、理念は日本光電の揺るぎない中心。それが、海外拠点ではかろうじて言葉を知っていても理解は曖昧、歴史に関してはほぼ誰も知らない。国内との大きなギャップを前に、「理念浸透に課題がある」。百瀬は強く思った。

とはいえ、海外子会社が増えはじめたのは2000年ごろからで、どの国でも立ち上げ後の数年は売上を出すだけで精一杯。百瀬が行った時点で理念浸透が不十分だったことには致し方ない面もある。国内とて、「海外で活躍できる人財を」と2013年ごろよりグローバル人財の育成が始められていたものの、その内容は主に語学。米村は回想する。

米村「TOEICの目標点数が掲げられるだけで、あの頃はまだ質的な面で海外と協働しようとまでの視野は無かったと思います。ただ、百瀬さんが海外研修に行った2年後くらいから、ようやく海外の子会社も一緒になって企業としての基盤づくりに取り組もうという動きが出てきたんです。現地の経営層からも『日本光電の歴史や理念、心得などをこちらの社員に理解してもらうためのツールが欲しい』という声が日本に届きはじめました。」

グループが真に理念のもとに一つとなり、ビジョンの達成に向かっていけるか。百瀬と米村が中核となり、世界の拠点を巻き込んだ挑戦が始まった。

「うちの会社は、
こんなにも社会に
貢献していたのか!」

「うちの会社は、
こんなにも社会に
貢献していたのか!」

実は、百瀬は海外研修から戻ってすぐに理念研修用の資料づくりに着手していた。

百瀬「そもそも当社の企業理念にまつわる話は口伝が多く、明文化はされていたが、散乱していて体系立っていない印象だったんです。『社員心得』なるものはあって、それを営業所で唱和してはいましたし、歴史に関しては社史を用いて説明することはありましたが、研修で使えるような標準ツールがない。それをまとめておこうと思ったんです。」

誰に言われなくても、必要と感じた仕事を黙々と進めていた百瀬たち。その働きのおかげで、ニーズが明確になってからの動きは速かった。2018年には国内で理念研修をスタートさせ、翌年に同じ内容を海外へも持っていく。第一弾はブラジル、現地に赴いたのは米村。

米村「すごい反響でした。責任者の方も『ここまで盛り上がったセミナーは見たことがない』とおっしゃるくらい。例えば理念を自分の日々の仕事に結びつけて捉えるワークでは、エピソードの発表者を募ると次々に手が挙がって、結局ほとんどの人が発表してくれたんじゃないでしょうか。こういう研修が待たれていたことを肌で感じました。」

安堵したのは国内で待っていた百瀬も同様だ。

百瀬「彼らからすれば“日本人が考えた日本の企業理念”ですし、受け入れてもらえるかは正直心配だったんです。でも、研修のエンディングにはスタンディングオベーションが起きたそうで、ちゃんと説明すれば伝わるんだ、国は違えど人の命を救いたいと強い想いを持って入社したのはみんな同じなんだと思いました。その後、上海で研修をした際には『この会社で長く働いてきたけれど、自分の組み立てた製品がこんなにも人のためになっているのだと考えたことがなかった』と話してくださった方がいて。我々がやりかったことは、まさにこういった働く意義や目的をもってもらうことだと感じました。」

2020年、コロナ禍で研修は一時中断するも、その後新たな長期ビジョンであるBEACON2030が策定されたことで再度動きが加速する。しかしそれは、もう一度「言葉の壁」にぶつかる契機にもなった。

日本の言葉の「輸出」は限界。
言葉づくりのプロセスから、
海外を巻き込んでいく。

日本の言葉の
「輸出」は限界。
言葉づくりの
プロセスから、海外を
巻き込んでいく。

日本光電グループがよりグローバルに一丸となって未来に進んでいくため、BEACON2030の中では「グローバル共通価値基準」という行動指針が定められた。これは従来の「社員心得」をベースに、理念を実現する上で全社員が体現する姿勢を表現し直したものだ。

百瀬「理念は創業以来70年間変わらずに大切にしてきた企業の根幹です。しかし企業の置かれている社会の情勢や市場の要求は70年の間に変化しています。70年前と同じ行動指針をそのまま適用していては成長できませんし、結果として理念の実現にも至りません。そこで、今の私たちが置かれている社会の中できちんと生きてくる行動指針、すなわち日本光電として大事にしている価値や、人財の評価も含むあらゆる意思決定の場面での基準となる価値として定めたのが、グローバル共通価値基準です。」

ところが海外子会社に向けてその英訳版をリリースしたところ、百瀬のもとには「言葉に違和感がある」という反応が次々に返ってきた。

百瀬「どうも、同じ英語でも各国で解釈や感覚の違いがあり、単語の受け止め方もそれぞれ違うということがわかってきたんです。英訳の正確・不正確の問題ではなく、言葉が使われる文化の相違によるニュアンスのズレ。これを解決するには、国内でつくった言葉をそのまま英訳して海外に持っていくのではなく、言葉をつくるプロセスから各国の人に入ってもらう必要があると思いました。」

2020年末、米村と百瀬は海外と連携したプロジェクトを開始する。主に巻き込んだ国はアメリカ、ドイツ、メキシコ、インド、ドバイの5拠点。あるときはグローバルで人事担当者が集まる会議の場で、各国のメンバにそれぞれの価値基準に紐づくエピソードを共有してもらい、言葉の解釈の焦点を合わせていく。またあるときは各国のメンバに個別インタビューし、一人ひとりが考えるグローバルの価値基準をヒアリングしながら今掲げている言葉へのフィードバックをもらう。「こういう説明だと日本光電らしいんじゃないか」という、表現の「らしさ」に関する意見をもらったこともあった。
非常に緻密な調整を重ね、9カ月をかけてついに英語版のグローバル共通価値基準が出来上がる。簡潔でありつつも、受け取る人の文化背景によって誤解や齟齬の起きない言葉選びで練られた英文は、ガイドブックの形で各国に配布された。

壮大な夢だからこそ、
私たちは一つになって
進んでいく。
壮大な夢だからこそ、
私たちは一つになって
進んでいく。

現在の米村と百瀬は、理念のさらなる浸透を目指し、さまざまな施策を打っている。

米村「社内のプロジェクトというと、これまでは上から選抜されたメンバで進められるものが多かったのですが、このプロジェクトでは初めて挙手制でメンバを募りました。参加してくれた社員たちからは、プロジェクトを通じて他部門・他職種の考え方を知ることができ、交流ができてよかったという声をたくさんもらっています。私としても、浸透のための全社員向けの研修をつくる際に、社長と何度も面談をしたり、実際にやってみてフィードバックをもらったりと、数えきれないくらいの修正を重ねてきました。大変な仕事でしたが、でもやりきったことで自信になったんです。このままいろんな施策を続けて、2030年までにグループの全社員が自然にグローバル共通価値基準に沿った行動ができているようにしたいですね。」

米村は晴れやかに語る。米村の長年の夢は、現状は各国でバラバラにおこなっている教育活動を、リーダ層や管理職だけでもグローバルで一緒に集まってディスカッションしながら学べるようにしていくこと。言葉の壁もあってまだ実現には至らないが、確実にその夢に近づいている。「難しそうな仕事でも、いつも楽しそうだね」と上司に言われたこともあるという米村。夢が壮大であればあるほど、心の奥に眠る創造性と情熱の扉が開くのかもしれない。

百瀬「私たちの目的は、あくまでも理念を実現することです。そして、それは日本にある日本光電だけで達成できないものだからこそ、世界にある全ての拠点の社員、そして協力会社様たちにも共感を広げてワンチームで達成していくためにグローバル共通価値基準がある。その本質をブレさせずに、今後は皆が進んでいく方向だけではなく、見ているものの焦点まで一致させられるよう、丁寧なコミュニケーションを心がけていきたいと思います。」

2024年現在、日本光電グループの拠点はグローバルに32ヶ所、社員は約5,900人。国ごとに文化や背景、現場の医療課題も異なる中、「日本光電としてのDNA」「大切にする価値観」を共有し、働く人の意識を一つにするグローバル共通価値基準。その真価はこれからの日本光電が何をどう生み出すかによって問われていく。グループ一丸となってこそ成し遂げられる夢があると信じて、今、私たちは一歩を踏み出す。

Profile

百瀬 渡
2006年 中途入社。前職は外資系総合人材サービス会社の営業職。日本発の企業で人事を担いたいという動機で転職活動を行い、日本光電に入社した。入社後はグループ内の派遣会社の立ち上げや新卒採用、労務管理、グローバル人事に従事。理念浸透のための研修プログラムを作成して国内外で展開、グローバル共通価値基準の英訳版の制作においても中心的な役割を果たした。

Profile

米村 晴夏
2007年 中途入社。前職は英会話スクールの営業職。マネジャとして若手の育成に携わった経験から、本格的に教育に興味を持つようになり転職活動。日本光電には社員の人柄、特に人命に関わる人ならではの社会貢献意識の高さに惹かれて入社した。入社後は研修の企画や運営をはじめ国内外の社員の育成に従事し、グローバル共通価値基準の浸透においても一期からプロジェクトの中核となって活動している。
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