PEOPLE 02 - 技術

既存の測定情報を
組み合わせることで
負担を増やさず
新たな情報を。
寺尾 真美Mami Terao

日本光電工業株式会社
バイタルセンサ事業部 第一技術部

2010年入社 理工学研究科 総合デザイン工学専攻 修了

寺尾 真美
研究室が医療系であったことから、医療機器メーカを中心に就職活動を行う。
幼少期に海外生活の経験があり、世界中で使われる機器を開発したいと思い、海外にも展開している日本光電へ入社。
現在は、新たな生体情報モニタの開発を担当している。

CHAPTER 01

常識を覆す
新技術を生んだ、
患者さんへの想い。

心拍数や脈拍をはじめとしたあらゆる生体情報が表示される生体情報モニタ。その情報は、すべてが手術中の判断材料となる。しかし、情報によっては簡易に測定できるものばかりではない。例えば、心拍出量。循環動態を見極める重要な指標であるものの、測定のためにはカテーテルを肺動脈まで挿入する必要があり、患者さんへ負担をかけてしまう。

可能な限り、患者さんに負担をかけたくない。そんな想いで開発した新技術がesCCOだ。心電図とパルスオキシメータから得られる脈波の測定を行うだけで、連続的な心拍出量の測定を可能にした。心電図も脈波も、すでに簡単に測定ができるパラメータであるため、追加のセンサを必要とせず、患者さんへの負担もない。従来の常識を覆す技術。その開発チームに、私も名を連ねている。

CHAPTER 01

CHAPTER 02

果たして、
この技術の
臨床的意義
はどこにあるのか。

私はこのプロジェクトの中で、治験業務を担当することとなった。エンジニアとして治験の計画を立て、計画通り治験が行われるよう、解析方法や根拠を関係者に詳細に伝える。その後、販売の承認を国からもらうための申請を行い、正確に測定できる条件やデータの解釈を徹底的に説明するというプロセスだ。しかし治験は、どれだけ知識があっても高い壁である。

未開拓の領域で、医師や有識者への相談や関連法例の確認、治験協力者の募集など、あらゆる人を巻き込みながら、手探りで必死に進めた。決して平坦な道程ではなかったが、得るものも大きかった。特に考えさせられたのは、esCCOを開発する目的。この技術の臨床的意義は何か問われ、答えに窮した。それまでの私は、負担をかけることなく測れるという新規性そのものに価値があると思っていたのだ。

CHAPTER 02

CHAPTER 03

技術の開発ではなく、
人を救うことが
目的だと気づいた。

有識者も交えて社内で議論を重ねた。何のために開発するのか。具体的にどのような場面でこの技術が役に立つのか。技術開発自体が目的なのではない。技術は、人を救うためにある。エンジニアこそ、その目的を強く意識すべきだと気付かされた。無事に治験は終了し、この技術を搭載した製品を計画中だ。しかし、本当に大切なのはこの後だ。

救える人が増えなければ、この技術を開発した意味がない。今は、製品化に向けて詰めの準備をしているが、いつも頭の中には、この技術で救われるはずの患者さんの姿を想い描いている。技術を通して、医療現場や患者さんにまで想いを馳せる。そこで本当に役に立つよう技術を開発し、伝えていく。そこまでできてこそ、日本光電のエンジニア。今はそう思っている。

CHAPTER 03
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